マフィンのお店ができるまで
プロの味にこだわる「就労支援事業」
~インタビュー記事~
昭和51年卒 古城 廣幸
昭和51年卒 小野 康史
2025年9月15日掲載
昭和51年卒 古城 廣幸
昭和51年卒 小野 康史
2025年9月15日掲載
この「私の経歴書」は、関西錦陵会の先輩や後輩の仕事(現役あるいはリタイア前の仕事)について紹介するコーナーです。仕事についての話は、趣味の話と同様、情報交換にもなり盛り上がりますね。また、異業種のことを知る良い機会にもなります。しかし、ふだんの活動だけでは、仕事についての詳しい話を聞く時間はなかなかありません。そういうわけで、このコーナーでは、いろんな仕事をされている会員の方に話を聞き、少しだけ、プロの業界をのぞいてみたいと思います。
みなさんも総会のおみやげで美味しい「ラスク」を一袋ずついただいたと思いますが、今回は、そのラスクをはじめ、メインの商品である「マフィン」専門のお店をオープンされた昭和51年卒の古城 廣幸さん、そして、マフィンのお店を立ち上げるにあたって、いろいろと協力やアドバイスを提供された、同じく昭和51年卒の小野 康史さんにお話を聞いてみたいと思います。
編集部:お二人には、お忙しいところお時間を取っていただきありがとうございます。
古城・小野:いえいえ、いつでもどうぞ。
編集部:さっそくですが、このマフィンのお店はいつオープンされたんですか?
古城:オープンしたのは、令和6年の5月28日です。
編集部:ネットなんかで検索すると、けっこう話題になっているようですね。
小野:まあ、それなりの「こだわり」はありますので…。
編集部:そうですよね。
古城:話が前後するかもしれませんが、このお店は、障がい者の方の就労支援事業として始めたものです。しかし、やるからには中途半端にはしたくありません。あくまでも、「本物志向」を目指し、障がい者が作るのだからおいしくなくてもあたりまえといった考えをやめ、どこにも負けないお菓子を作りたいと思ったのです。だから、材料にこだわりました。
編集部:なるほど。だから美味しいんですね。そこら辺はあとでゆっくりお聞きすることにして、この「san san POIRE/サン サン ポアール」というお店の名前はどこから来たんですか?
古城:実は、当初は、マフィン専門店「さんさんポアール」としてオープンしたのですが、その後、大阪帝塚山にあるお菓子店の商標登録に接触することがわかり、現在では、店名を「さんさん梨梨」(さんさんペアーズ)と改名しました。ポアールは仏語で梨、ペアーは英語で梨です。
編集部:つまり、フランス語で行きたかったが、すでに使われていたので、英語の言い方にしたということですね。でも、なぜ「梨」なんですか?
古城:これも、私の「こだわり」なんですが…
小野:彼はこう見えても、けっこう「こだわる」男なんですよ(笑)。
編集部:そんな感じですね。
古城:実は、故郷では祖父の代まで果樹園(梨・桃・イチジク)を営んでいたという背景があるんです。私の娘2人にも、名前に「梨」という字を使っています。
編集部:へえ、そうなんですね。ちなみに娘さん方のお名前は?
古城:それはちょっと、個人情報なので言えません(笑)。
編集部:了解しました。今度そっとお聞きすることにします。
ちなみに、このマークになっている似顔絵もステキですよね。古城さんによく似てますね。だれかに描いてもらったんですか?。
古城:はい、長女が描きました。
編集部:へえー、長女さんが…。
古城:長女が自分の結婚式のときに、家族紹介として私(古城)の顔を作ったんですが、その絵を少しアレンジしたものです。始めは恥ずかしいので使うつもりはなかったのですが、スタッフから「是非」という声があり採用しました。
編集部:「手作り」の雰囲気が出ていて、とてもいいと思います。
ところで、もともと古城さんはお菓子関係の仕事をされていたんですか?
古城:経歴としては、お菓子はもちろん料理もしていませんでした。もともと35歳より会計事務所を営み、50歳の時に母親が介護を受けることになったため、平成23年10月に訪問介護センターを開設したんです。現在は障がい者を含め介護福祉総合事業をしています。
編集部:そうなんですか。まったく違う業種ですよね。それがなぜ、「マフィンのお店」につながったんですか?そこら辺のきっかけについてお聞かせください。
古城:従来、障がい者に対する就労支援事業所では、紙袋等作成の軽作業を手伝い、それに対する賃金を受けるという形で事業が成り立っています。しかし、事業ですから当然納期があります。その納品日に間に合わせること自体が大変なことも多々あり、スタッフが残業をして間に合わせるといった日常が続いていたのです。そこで、「納期がなく自分たちが作ったものを売る」ことに着目し、「お菓子作り」はどうかなと思ったわけです。
編集部:素晴らしい発想の転換ですね。
古城:ところが、そうは言っても、具体的に何をしたらいいのかわかりません。そんなときに、関西錦陵会に参加するようになって、同期の小野康史くんと再会したのです。
編集部:やっと、小野さんの登場ですね。
小野:待ってました!
古城:会に参加するたびに、お互いの卒業後の経歴を話すことが多くなり、話がトントン拍子に進み「マフィン」が完成したのです。
編集部:もう「マフィン誕生」に行くわけですか。話が早い!
小野:実は、その「前ぶれ」がありまして…。まだ現役で仕事していた数年前に古城くんから、こんなことしたいという話があって、現役リタイアしたら手伝うと約束していました。このような縁も関西錦綾会あってのものだと感じています。
編集部:やっぱり、「縁」は大事ですね。
古城:小野くんとの「縁」は高校時代からですね。豊津高校(育徳館高校の前身)ではクラブが同じだったのです。入学後、小野くんは春から、私は秋から音楽部に入部しブラスバンドにて毎日練習をしていました。卒業後、関西錦陵会で会ったのが60歳だったので42年ぶりの再会です。
編集部:そうでしたか、なるほど。
ちなみに、今回お店を立ち上げるにあたって、小野さんにはどういうところをお手伝いしてもらったんですか?
古城:小野くんには、スタッフ指導、店舗設計、営業許可など全てにおいてお願いをしました。現在では、月に1回(2泊3日)来社していただき、新製品や品質維持をみてもらっています。
編集部:小野さんは、もともと、お菓子関係の仕事をされていたんですね。
小野:はい。大学を卒業後、新潟柏崎市が本社の某製菓メーカーを皮切りに、福岡市本社の外食産業企業などで、和洋菓子、パン、デザート、アイスクリームなどスイーツ全般の商品開発、生産技術、工場運営などを経験しました。
編集部:関西でもお仕事されてましたよね?
小野:ええ。平成21年からは、大阪泉佐野市が本社の「むか新」という会社で仕事をしていました。そのときに、関西錦綾会に参加するようになりました。
編集部:では、いよいよ「美味しさ」の秘密にせまってみたいと思います。美味しい味の秘訣についてお聞かせください。
小野:「さんさん梨梨」さんのコンセプトである「natural、basic、handmade」にもとづき、良い原材料を使い、その素材を活かしたシンプルな配合で、昔ながらの手作り製法にこだわった作り方をしている点ですね。工場で作る大量生産ではなく、少量での手作業主体の方法でしか出せない味わいや特徴があるのです。
また、主原料の小麦粉(兵庫県産)、砂糖(種子島産)、バター(国産)など、安全で安心な国産材料の使用にもこだわっています。
古城:小野くんも「こだわる」男なんです(笑)。
編集部:こだわりの最強コンビが作り上げた「マフィン」というわけですね。
ところで、商品開発でいちばん苦労されたところはどこですか?あるいは、お店を立ち上げるにあたっての苦労はありましたか?
小野:まず、菓子を作るのが職人ではなく、主役は、障がいを持たれている、素人の方だというところでした。技術的にむずかしくてもだめだし、作業工程も出来るかぎりケガなどしないように、安全面や食品衛生面なども考慮しなければならないと思いました。そういった点を考えての「マフィン作り」でした。
編集部:事業の性質上、特殊な事情がいろいろあるんですね。
小野:また、マフィンは家庭でも作れる菓子ですが、家庭で作れるものを作っても「事業」にはなりません。それとの違いを出すために(家庭では作れないプロの品質を目指して)、古城くんにお願いして、マフィンを焼く設備(オーブン)はプロ仕様のものを導入してもらいました。
編集部:「妥協のないプロの味」というわけですね。
総会で出席者全員に配っていただいた「ラスク」の話もお聞かせください。
小野:「マフィン」はあまり日持ちするものではないので、日持ちするものとして「ラスク」を作りました。また売れ残りのロス対策として、せっかく作ったものを無駄にしないということもあります。
古城:「マフィン」の美味しさは作ってから翌日なので、どうしても売れ残りが出来てしまいます。そこで、食品ロスをなくすSDGSの一歩として「ラスク」を作ることにしたのです。
編集部:「ラスク」はどれくらい持つんですか?
私もいただきましたが、その日のうちに食べてしまったので賞味期限はチェックしてませんでした。
古城:保存状態にもよりますが、2週間から3週間おいしく食べられるので好評です。特に3種類(バター・バナナ・チョコ)の味が同時に食べられるところがうけてます。
編集部:将来的には、この「さんさん梨梨」をどんなお店に発展させたいですか?
古城:現在は「マフィン専門店」としていますが、マフィンの材料の1つであるバナナを利用した「バナナスムージー」をこの夏から発売しました。また、マフィンもブルーベリー味、レモンジンジャー味を加え5種類の味とします。
編集部:美味しそう… たまりませんね。
古城:さらに、故郷の果樹園で作っていたイチジクを農作業として栽培し、ジャムやドライフルーツ作りを就労支援事業所として手がけたいと考えています。イチジクも豊津高校の同期である西村くんに指導を受けたいと思っています。
編集部:「西村さん」と言えば…?
古城:51年卒本部学年幹事の西村勝さんです。この三人で写っている写真の後ろでガッツポーズをしているグリーンのシャツの男性です。
小野:西村くんの作っているイチジクはおススメですよ。
編集部:そうなんですか。「錦陵会」だけでもいろんなことができそうですね。
最後に、この記事を読んでくださっている関西錦陵会のみなさんに向けて、なにかメッセージをお願いします。
古城:関西錦陵会に参加することで、こんなコラボができるとは考えてもいませんでした。本当に豊津高校に入学して良かったと思っています。これからは関西錦陵会の仲間で何か社会貢献ができることを考えていきたいので、皆さんの協力をお願いいたします。
小野:今は福岡の自宅に戻っていますが、立ち上げ後も指導や新商品開発でたびたび関西に来ているので、関西錦綾会の会合にも参加できるのも楽しみの一つです。
編集部:古城さん、小野さん、今日は貴重なお話をありがとうございました!
編集部では、会員のみなさんの仕事についての話をお聞きしたいと思います。「私の経歴」のテンプレートをダウンロードしていただき、そのなかの質問にお答えいただき編集部あてにお送りください。なんどかやりとりをさせていただいた後、インタビュー記事として掲載いたします。